トキ子のカボチャ

トキ子のカボチャ (1979年)
トキ子のカボチャ (1979年)
黒川 常幸, 遠藤 てるよ

またひとつ、とても心打たれる戦争絵本に出会いました。
トキ子のカボチャは、終戦間近の1945年、東京が舞台の物語です。

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トキ子は、お父さんとお母さんとの3人暮らしです。
ある日、トキ子はカボチャのタネをひろいます。
家に持って帰り、家の前にある防空壕の上の土に植えてみます。
カボチャのタネは、芽を出し、どんどん伸びていきました。
そしてカボチャには、花が咲きました。
そんな頃、トキ子のお父さんにも召集令状がとどきました。
お父さんは兵隊さんになって行ってしまいます。
トキ子はお父さんに「いつ帰ってくるの?」と聞きました。
お父さんは「カボチャが大きくなったころ」といいました。
そんなお父さんが、「カボチャを大きくするおまじない」をして見せてくれました。
カボチャには雄花と雌花があります。
花の根本にふくらみのあるのが雌花。ふくらみの無いのが雄花。
雄花をとって、雌花にそっとかぶせます。
「こうすると、カボチャは大きくなるんだよ」
そうしたら、雄花の役目は終わりだよ、とトキ子に教え、その役目の終わった雄花で色水を作ってお父さんと乾杯ごっこ。

…お父さんは軍隊に行ってしまいました。
空襲は日増しにひどくなり、まわりの家々はほとんど焼かれ、トキ子の家を含めて5,6けんだけが焼け残りました。
知り合いなどがたくさんトキ子の家に逃げてきて、大勢の人達と共に暮らしました。
食べるものにも事欠く中、カボチャは大きくいくつか育ちました。
お母さんはそのカボチャをとって煮て、みんなで食べました。塩で味付けしただけの皮の固いカボチャでしたが、みんな美味しい美味しい、といって喜んで食べました。
トキ子は「カボチャの最後のひとつは、お父さんと一緒に食べるからとらないで」といいました。でも、とうさんがまだ帰らないうちに、最後のひとつも食べなくてはならなくなりました。
お母さんは「お父さんが帰ってきたら、すぐどこかでカボチャを見つけてきましょうね」といいました。
最後の一つを食べた後は、葉っぱも食べ、太い茎だけが残りました。
葉っぱだけではありません。食べられそうなものは何でも食べました。

しばらくすると、お父さんが戦死したという知らせがとどきました。
……
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結末は、読んでいて涙が出ます。
戦争によって生きるのが困難な時代に強く生き、「お父さん」という大きな存在を失う悲しみがよく描かれています。
最後に一つの希望も描かれています。

このお話、大人が読めばトキ子のお母さんの芯の強さにも心打たれます。
夫を失う悲しみ、食べることにも事欠く日々、日々激しくなる空襲から命を守るための苦労…数々の困難を抱えながら、このお母さんは驚くほど優しく穏やかなのです。
この辛い時を、我が子と共に乗り越えよう、という心を感じます。

子どもには子どもなりの感動がありますが、大人は大人なりの視点で感じることができる絵本です。
ぜひ読んでみてくださいね。




コメント
なじるしさん、コメントありがとうございます。
楽しい絵本は楽しい絵本なりの、悲しい絵本は悲しい絵本なりの感動があるので、それぞれ別の神経を刺激されます。

私もファンタジー系の絵本は大好きですよ。
でもきっと子どもも感じていると思います。良い絵本だからって1ジャンルのみの感動を味わうよりは、広く色々な感動を味わいたいのではないかと。

涙の出る絵本の読み聞かせは辛いんですが、本気で泣くと読めないので、yんでいる間だけは極力ドライに読みに集中している母です…。
  • atu
  • 2006/12/08 11:58 AM
読んであげるのも一人で読むのもこういうのって、苦手です。
ナキ入っちゃうから。
でも、本当は、今、読んであげたり、触れてほしいお話なんですよね。
ついついファンタジー系に走ってしまいます・・・
  • なじるし
  • 2006/12/07 8:19 PM
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