一つの花

一つの花
一つの花
今西 祐行, 鈴木 義治

この絵本は戦時中のお話です。
戦争絵本はその残酷さ故に、残酷なシーンや悲惨な状況が描かれているものが圧倒的に多いと思います。
この絵本も読み始めから戦争絵本だと分かりましたので、お話の途中には、そういった辛い場面が当然あるだろうと思って読み進めました。
すると、ないのです。
このお話には、戦争絵本だというのに、悲惨なシーンが一つもないのです。

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おやつどころか、食べることにも事欠く戦時中。
とある家庭に生まれたゆみこが、最初に覚えた言葉は「ひとつだけ、ちょうだい。」でした。
ご飯やおかずを「もっとちょうだい」「もっとちょうだい」といった時、「一つだけね」といいながら自分の分を分けてくれたお母さんの口癖をいつの間にか覚えたのです。
ある時、あまり体の丈夫でないお父さんが徴兵されました。
貴重なお米を炊いて作ったおにぎりと、包帯と薬をカバンに入れ、ゆみこはお母さんにおぶわれて、お父さんを駅に送っていきました。
道中、ゆみこは「一つだけ」「一つだけ」といって、おにぎりを欲しがりました。
お母さんはその度に大事なおにぎりをゆみこにあげました。
お母さんは、お父さんとの別れ際にゆみこの泣き顔を見せたくないと思い、大事なおにぎりをゆみこにあげたのです。
駅に着いた時には、おにぎりは全部無くなっておりました。
しばらくすると、またゆみこの「ひとつだけ、ちょうだい」が始まりました。
でもおにぎりはもうありません。ゆみこは「ひとつだけ」「ひとつだけ」といって泣き始めてしまいました。
その時お父さんが、近くに忘れられたように咲いている一輪のコスモスを見つけました。「ほら、ゆみちゃん。ひとつだけね。」といってお父さんはゆみこに一輪のコスモスをあげました。
ゆみこはにっこりわらいました…
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食料も乏しい苦しい戦時中、それでもお母さんとお父さんは、我が子に精一杯の愛情を注いで育てていた様子が、とても丁寧に描かれています。

さて、結末ですが、戦争へ行ったお父さんは…、やはり帰ってこないのです。
温かかった家族を引き裂いた悲しい戦争、それが強烈に心に刺さるお話です。

ぜひ読んでみてくださいね。

コメント
きつねこさん、コメントありがとうございます。
きつねこさんも教科書でこのお話をご存知なのですね。

食べることは生きること。食べ物を欲しがる子に、それをあげられない辛さは大人だからこそわかる気持ちですよね。

ゆみこのお父さんとお母さんに共感し、切なくなってしまいます。
  • atu
  • 2006/10/31 11:34 AM
私も、このお話は子供の教科書で読みました。
親として読むからか、ご両親の心情を思うととても悲しく、
思わず涙してしまいました。
子供用のお話や絵本でも、大人になって読むと別の感じ方、
受け取り方がある、と思わされるお話でした。
  • きつねこ
  • 2006/10/30 10:24 PM
mayuko17さん、コメントありがとうございます。
「一つの花」は教科書に出てくるお話だったのですね。
子どもも分かりやすいお話ではあるけれど、むしろ大人が、感じることの多いお話ですよね。
  • atu
  • 2006/10/30 9:07 PM
こんにちは。このお話は、ちょうど今小4の息子の国語の教科書に出てきました。本読みの宿題のたびに、なんだか切なくなってしまうのですよね。
  • mayuko17
  • 2006/10/30 10:17 AM
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