DVと児童虐待の絵本
あなたはちっともわるくない
安藤 由紀
この絵本は児童虐待とDV・暴力の問題を真っ向から描いていますので、かわいい表紙からは想像もつかない、かなり異彩を放った絵本です。
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お友達と遊んでいたちびくまくんは、お友達が手にとげが刺さった時、一緒に病院に行きました。そこでお医者さんに体の「あざ」を発見されます。
ちびくまくんは「ころんだの」といいます。お母さんにぶたれたあざであることを隠すのです。
虐待を受けている子どもの多くは、殴ったり蹴ったり、ひどいことをする自分の親をかばい、隠します。「お母さんは悪くない、自分が悪い子だから」「お父さんは悪くない、自分が悪かった」と。
お医者さんはいいます。「あなたはちっとも悪くないよ。」「大人が子どもにひどいことをするのは、そのひとのこころにとげが刺さっているから。とげを抜いてあげればやさしくなるよ」
ちびくまくんは自分が悪いんじゃないこと知って、ちょっと安心します…
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絵本の中では、DV・児童虐待から解決までを、非常にコンパクトにまとめてありますので、子どもにDV・児童虐待というものを教えるためには大変良い絵本とおもいます。
個人的には、夫にDV行為を受けた経験がありますので、そんな簡単な問題じゃないことをつくづく感じています。
子どもが暴力を振るう親をかばうように、DVを受けている妻もまた、夫をかばいます。怪我やあざを隠したり、病院に行かなかったりします。私もそうだったので、その心理状態はよく分かります。
DV行為をなぜするのか、という根本原因について、医学的に心理的に的確に述べることはできませんが、簡単に言えば心の病です。
「とげ」のように抜けばぽろりととれる、そんな代物じゃない。一度とげを抜いたつもりでも、いつの間にかまた元の状態に戻ってしまってる、それを繰り返すのが心の病です。付ける薬もなければ、DV専門医やアルコール専門医でない限り理解もされない。
暴力を受ける子どもや妻は、身の回りの不理解を同時に感じ、夫の心の病の影響を少なからず受けて、深い深い苦しい状態にはまっていくのです。
個人的意見ですが、暴力からの解決方法は二つしかないとおもいます。
一つは、初めて暴力を受けた、その直後に、専門の援助機関や専門の医療機関に助けを求めること。心の病である限り、一般論は通じませんので説得や話し合いは効果がありません。遠回りをするうちに、心の傷を深めるだけです。暴力が複数回にわたっていくと、自分も同じく心の病状態になり、ひた隠しに隠す道を歩んでしまうので、1回目で決心する必要があります。
もう一つの解決法は、もう複数回にわたり暴力を受け、自分を責めるようになってしまった妻や子どもの場合。
こちらは自分で何らかの行動を起こすことはもはや難しく、うまく援助機関につながれば良いのですが、そうならない場合が多々あります。その場合は、家族または友人が察知した時が、救出できる時。他人がその家族を援助機関に繋げてやらなければ、きっといつまでも泥沼の状態は続きます。妻は大人なので「自分の人生自分の責任」で済みますが、子どもがいる場合は急を要します。子どもの頃受けた心の傷は、その後の精神的成長に支障を来すからです。
「お父さんは子どもには手を出さない」場合も子どもが直接暴力を受けた場合と同じく、救出が必要だと思います。母親が暴力を受けている場合も、同じ密室で暴力を目の当たりにしている子どもが、心に傷を受けていないはずがありません。それを「お父さんは子どもに手をあげないから」なんて言うお母さんを時々見かけますが、完全に心を病んでいると思います。だから気づいたまわりの人が、まずは市役所の福祉関係の相談先に、相談するようすすめる必要があるとおもいます。
心の病は、一見外から見ればわかりません。
病んでいる人は、自分から助けてくださいとは言いません。
色々な事件がある昨今、「変質者」という言葉をよく聞きます。差別的に感じ私は好きではありません。
心の病は誰でも成り得ます。
特にストレスの多い現代は増えていると思います。
誰しも、心の病になったら、悲惨な事件に行き着く前に、救助の手がさしのべられることを、願ってやみません。
- 2006.04.10 Monday
- 世代を問わず
- 09:10
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- by atu