しばいのすきなえんまさん

しばいのすきなえんまさん (幼児みんわ絵本)
渋谷 勲,松谷 春男

久しぶりにおもしろい!と心躍る昔話に出会いました。
千両役者、だんじゅうろうと、地獄のえんまさまのものがたりです。

だんじゅうろうは芝居上手の役者、えらいにんきで「せんりょう、せんりょう」「にっぽんいち!」と声がかかり、雨あられのようにおひねりが飛んでくる役者であったが、あるとき、はやり病にかかって、ころっと死んでしまったんだと。
だんじゅうろうは、ひとりさびしくあの世への道をとぼとぼと歩いていたら、ついたのは、地獄の入口。引き返そうとすると、えんまさまの声がした。
「だんじゅろう、きたか」
「だんじゅうろう、おめえは生きてた時に、てふりあしふりして、人をだましてぜにもうけしてた、じごくさいけ!」

…でもこのえんまさま、今度はやさしい声でこういった。
「なぁ、だんじゅうろう、おれはまだ芝居というものをみたことがねえ。
ここでうまく見せてくれたら、極楽さやってもいいぞ」

極楽と言われてだんじゅうろうは喜んだ。
だんじゅうろうはえんまさまに申し上げた。
「えんまさまに申し上げます。芝居は一段高いところでやらねばだめなもんです。」
そこで、えんまさまは下に降り、だんじゅうろうが上にあがった。
だんじゅうろうはまた言った。
「芝居はこげな白い着物ではやりづらいもんです。」
そこでえんまさまは自分の着物とだんじゅうろうの着物を取り換えた。

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あれよあれよという間に、だんじゅうろうは立派なえんまさま姿。
いっぽうえんまさまはあわれな地獄行きの死に人の姿。

さて、結末は何となくこうなるのかな…と思う期待を裏切りません。
ぜひ、読んでみてくださいね。

女トロル

女トロルと8人の子どもたち―アイスランドの巨石ばなし
グズルン ヘルガドッティル,Gudrun Helgadottir,Brian Pilkington,山内 清子

「トロル」というと「3びきのやぎとがらがらどん」が有名なのではないかと思います。大きくて何とも恐ろしげな怪物(?)です。

アイスランドに伝わる物語、こちらの「女トロルと8人の子どもたち―アイスランドの巨石ばなし」には女であり母である女トロルが出てくるばかりでなく、その8人のこどもトロル、男トロルがとっても人間らしい暮らしの姿を見せてくれています。

女トロルと男トロルは恋もしますし、お掃除もします。
女トロルはお料理もしますし、こどもトロルにおっぱいも飲ませます。
いつもニコニコ子供たちをいっぱいの愛情で育てています。

それでも、トロルはトロル。人は人。
トロルがお料理すれば、人間は「山の噴火だ!」と言います。
トロルがどったんばったん転げまわれば、人間は「地震だ!」ということになります。

とっても素敵で人間味あふれるトロルの物語です。
ぜひ、読んでみてくださいね。

やまんばと3にんのこども

やまんばと3にんのこども (むかしむかしばなし)
樋口 淳

世の中の昔話は、原話が恐ろしい内容でも、子供向けに恐ろしさを取り除いて「再話」されているものもありますが、このお話は、本当に恐ろしい昔話です。

よく登場する「やまんば」が出てきますが、まず、母親を食べ、次に3人兄弟の末っ子を食べてしまいます。

「本当に食べた」ということが、読んでいてドキッとする物語です。

挿絵はかわいらしいけれど、本当に怖いね…と感想が漏れる昔話です。
ぜひ、読んでみてくださいね。

ダンスのすきな悪魔

ダンスのすきな悪魔
ヴァツラフ ポコルニー,Vaclav Pokorny,池田 香代子

特にメッセージ性は感じないストーリーではありますが、温かい色調の挿絵と全体の雰囲気で、子供たちがとても気に入った絵本です。

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あるところに、キャシーという女の子がいました。
キャシーはとても美しかったので、みんなキャシーのことが好きでしたが、キャシーは「結婚するのは特別な人」と決めておりました。
「王様とか、王子様とか、そんな特別な人」と決めておりました。

村では、年に一度のダンスパーティが行われました。
キャシーも何カ月も前から新しいドレスを用意して、楽しみにしておりました。
ダンスパーティの日、見たこともない男の人がやってきました。
キャシーはその見たこともない男の人が好きになり、一緒に踊り続けました。「たとえあなたが悪魔だとしても、私はあなたと踊りたい!」とさえ思いました。
ところがこの男性、本当に悪魔だったのです。
悪魔は一度でいいから人間の女の子とダンスをしてみたい、と思い、地獄の底から抜け出してきていたのでした。

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さて、キャシーは自分の願っていた「特別な人」と巡り合いました。
特別な人、は王様でも王子様でもなく悪魔でしたが、キャシーは幸せになれるでしょうか?

ぜひ、読んで確かめてみてくださいね。

やまんば

やまんばやかたたんけんします!
ごとう りゅうじ, さとう まきこ

程よい日差しと、涼しい風が気持ちの良い季節となりました。
先日、市主催の森林体験というのがあって、母と子どもたち3人で参加してきました。
「山の先生」にリードしてもらいながらの山歩き。
よくわからない赤い木の実を、「これは食べられる実だよ、たべてごらん」と「山の先生」に差し出され、果敢に食べてみると、ん〜〜〜、すっぱい・・・。
「これは「せんぶり、といって薬草なんだよ。食べてごらん」と「山の先生」に差し出され、果敢に食べてみると、ん〜〜〜、にがい!!!。

などなど、ふしぎな「山の食」を堪能しながら楽しく山歩きしてまいりました。
山から下りてくると、ちょうどお昼時。ぺこぺこのおなかに「やまんば汁」という汁物をふるまっていただきました。
「やまんば汁??何かしら??」
と食べる前にひと時、子供たちと話し合いました。
「やまんばの肉が入ってる!」
「作った人がやまんばなのかも!!!」
など、ひと時「やまんば汁って何?」に盛り上がりましたが、作っている人は奇麗な女性でやまんばには見えませんでしたし、入っているお肉はどう見ても鳥のお肉。
だしがきいて、キノコたっぷり、醤油味のとってもとってもおいしい「やまんば汁」に舌鼓を打ちましたが、さて「「やまんば汁って??」とおもいつつお椀の中を探してみると、見慣れないお団子がゴロゴロと入っています。
ご飯の粒粒をまとめたようなご飯のおだんごです。
これがとってもおいしくて、母的には、ずいぶん前に死んだおばあちゃんがたまーに作ってくれたご飯のお団子とおんなじ味で懐かしく、子供たちもおいしいおいしいと大喜びで食べました。

食べ終わったあと、ごちそうさまをいいながら作ってくださったお姉さんに作り方を聞くと、
【1】温かいごはんを水でかるく洗ってざるにあげる
【2】ご飯にかるく塩を入れる
【3】片栗粉を結構たっぷり入れる
【4】ごはんがややつぶれるぐらいこねたら、味付けした汁物にぽとんぽとんと入れる
   お団子がういてきたら「煮えました」のしるしです

と教えていただきました。
その日は家で早速言われたとおりにつくってみました。「やまんば汁」を。
家で作ったものも、とってもおいしくて、懐かしい「やまんば汁」でした。

さて、絵本と関係ないことばかり書き連ねてしまいましたが、こちらの「やまんばやかたたんけんします!」にでてくる「やまんば」もおそろしい「やまんば」は出てきません。学校の生活科のお勉強中に、町探検の一環として、一軒の家に訪問するお話です。
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探検した家は、普段子供たちが「やまんばやかた」として恐れている家でした。
先生と一緒におそるおそる入ってみると、たくさんの、犬、猫など動物たちがいっぱい!そしてその家のおばさんはやまんばとは程遠い容姿の優しそうなおばあさん。
でも・・・
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小学生の中学年ぐらいににちょうど良い本だと思います。
読み聞かせれば幼稚園でも喜んで聞いてくれます。

ぜひ読んでみてくださいね。





まゆとおに

まゆとおに―やまんばのむすめまゆのおはなし (こどものとも傑作集)
富安 陽子, 降矢 なな

大好きな「めっきらもっきらどぉんどん」にでてくる「しっかかもっかか」に似ている子が表紙に描かれていると思ったら、思ったとおり、「めっきらもっきらどぉんどん」を書いた降矢 ななさんが絵を描いた絵本でした。

大好きな「めっきらもっきらどぉんどん」みたいにおもしろいのかなー、と期待して読んでみると、期待を決して裏切らない、楽しい絵本でした。

やまんばのむすめ まゆはある日山中で鬼に出会います。鬼をしらないまゆは、鬼の誘いにのって岩谷へとついていってしまいます。
鬼のたくらみは、もちろん、おいしそうなまゆを食べてしまうことでした。

鬼が岩谷の前でたきぎ拾いを始めると、「何か手伝うことない?」とまゆ。
鬼はまゆにたきぎ拾いを頼みます。
たきぎ拾いを頼まれたまゆは近くにあった杉の木を1本、根こそぎえいやっとひっこ抜き、それをばりんばりんと折って、あっという間にたきぎの山を作ってしまいました。鬼はびっくりして口をあんぐり。
次に「石ころ」を2つ3つ拾ってくるように頼まれたまゆは、鬼の岩屋の壁を思いっきり蹴飛ばします。岩屋の壁の岩はガラガラと崩れおち、鬼はびっくり仰天。
まゆは崩れた岩の中から大きな石を三つ選んで運んであげました。
いよいよ鬼は大鍋に水をたっぷり入れて、まゆの運んでくれた石の上に鍋をかけ、火をつけました。
「何をするの?」とまゆがきくと、おには「寒い時は熱いお風呂が一番」と答えます。
本当はまゆを大鍋で煮て食べてしまうつもりなのです。



さてさて、まゆは食べられてしまうのでしょうか?
それは絵本を見てのお楽しみですが、こんなに力持ちのまゆですから、鬼ごときにつまみ上げられて煮て食われる、なんていうエンディングではありません。
まゆが強くて単純に鬼をやっつけるお話でもありません。
とても心地よい結末になっています。
ぜひ読んでみてくださいね。



くししししし…

山んばあさんとむじな
山んばあさんとむじな
いとう じゅんいち

「日本の昔話」ではなく創作だと思いますが、山んばあさんとむじなは楽しくてこわい、おすすめの絵本です。
お話の中で山んばあさんの笑い声「くししししし…」は何とも不気味で耳に残ります。
ちょっとトーンを落として、静かな部屋に不気味に響かせながら読むと、子ども達は本当に恐ろしがりました。
読んだ後はだいたい山んばあさんごっこ(いたずら)になります。
トイレに誰かが行くと、こっそり近寄り、不気味な声で「くししし…」
中に入っているのが長男の時は「やーだー!!!」と大騒ぎ。

母も子どもも大好きな山んばあさんとむじなぜひ読んでみてくださいね。

こわいけど、たのしい鬼

ふくはうち おにもうち
ふくはうち おにもうち
藤田 勝治

我が家では、何かと長男が悪さをした時に鬼のお世話になっておりますので、鬼は怖い存在であるのと同時に我が家には必要な存在です。
そんな「鬼の子育て」にピッタリな絵本に出会いました。

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ふくはうち おにもうちは、「おにはそとー!ふくはうちー!」で追い出されてきた鬼達が、人のいい男の家に上がり込んで、酒を酌み交わし、楽しいひとときを過ごします。
外から帰ってきた嫁と子ども達は、家に鬼がいるのをみてビックリぎょうてん。
ビックリしたり、怒ったり。それでも鬼と男は飲めや歌えやで大騒ぎ。
そこを通りかかった福の神。なにやら楽しそうだと家をのぞき込むと、何とそこには鬼がいるのでビックリ!逃げようとした。それを見ていた嫁さんは…
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最後に、鬼さん、ありがとう。家にも是非来てね。と言いたくなるような1冊です。

落語絵本

じごくのそうべえ―桂米朝・上方落語・地獄八景より
じごくのそうべえ―桂米朝・上方落語・地獄八景より
田島 征彦

落語絵本、地獄に落ちたそうべえ他4人の男の話ですが、地獄での「活躍」ぶりが爽快です。
ぐらぐら煮え立った鍋に放り込まれれば、山伏のふっかいが「みずのいん」をむすんでい〜い湯加減に。まわりの鬼達へ「石鹸とタオル!」という始末。
針の山へ連れてこられれば、軽業師のそうべえ、ココは自分にまかせておけとひょひょいのひょいで登ってしまう。
ついにはこの世へ戻されてしまいました。
つまり、生き返った、というわけです。

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お話の途中に三途の川を舟で渡るシーンがあります。
「あんまり端に行くな、落ちたら生きるぞ」と鬼が言います。
そうか、三途の川で落ちたら死ぬんじゃなくて逆に生きるのか。
じゃあ、三途の川は落ちたいね、生き返れるんなら。

なんて子ども達は言っておりました。
ぜひ読んでみてくださいね。

やさしいオニ

こんにちはおにさん
こんにちはおにさん
内田 麟太郎, 広野 多珂子

我が家の子ども達にとって、オニは時として怖い存在でありながら、絵本では親しみのある存在です。母の私はこわーいオニがすき。子ども達は楽しいオニが好き。
「こんにちはおにさん」を読みました。広野 多珂子さんの挿絵がいかにも「やさしいオニ」の雰囲気です。
さて、どんなお話かわくわくしながら読み進めると、単なる「優しさ」だけでなく心の描写が細かく、心の動きが絵となって目に思い浮かぶような、そんな繊細さがありました。
年少さんにはまだ「心の動き」的な部分は難しいかもしれませんが。年長さんぐらいならいろいろ考えながら読めると思いますよ。

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